電子の海でダンスを

ライターの雑記帳。仕事じゃないのでゆるーく書いてます。

今日のお題「土星」#2

 

土星: 第六惑星写真集

 

私は写真や映像でしか土星を見たことがなかった。

教科書やテレビの中の土星の写真は、大きくてぼやっとブラウンに輝く鮮やかなガス星で、土星の輪の筋まで綺麗にみえていて、とても美しかった。

 

少し前、旧歴の七夕の日(つまり8月27日)に、浴衣で星を観測しようというイベントがあったので行ってきた。

イベント場には星を見ることができるりっぱな望遠鏡がおかれていた。素人の私でもわかる。見るからに高そうな望遠鏡だった。

このとても性能の良い望遠鏡から、七夕星であるベガとアルタイルも見られるし、なんと土星まで見ることができると言われて、私は大人げなくはしゃいだ。

見せて下さいと喜ぶ私に、望遠鏡を調節する星好きの案内人たちは、まんざらでもなさそうに笑って、ベガやアルタイルに照準を合わせてくれた。

どうもこの人たちは、本当に星が好きなようで、星に興味がある人には、とても親切にしてくれるのだった。

 

望遠鏡をのぞくと、ベガもアルタイルも白々と小さな電球のように輝いている。

肉眼で見ると粒のような星も、望遠鏡から見ると本当に鮮やかな星なのだ。

白い線香花火を落としたように、本当に煌々と輝いていて、宮澤賢治はどうしてあんなに星が好きなのだろうと思っていた私も、今なら彼のが星好きが理解できるかもしれないと思うほどだった。

 

こんなすごい望遠鏡なら、土星はどんなに大きく美しく見えるんだろう、私は土星に照準を合わせた次の望遠鏡を覗き込んだ。

そこには、ぼんやりしたブラウンの影があった。

薄い茶色の輪で、それが土星だとはっきりわかる。でもその見え方は、テレビで見た鮮やかさでもなく、写真で見た美しさでもなく、まるで顕微鏡のシャーレの上に、ミドリムシを置いたときのようなぼんやりした映り方だった。

古い解像度の低い写真を見たような感じ。

思わず

「すごくぼんやりしてるんですねぇ。はっきり見えるわけではないんですね、ナショナルジオグラフィックみたいに」

と私が言うと、案内人が笑った。

「土星はねぇ、遠いんです。地球から月の4000倍くらい遠いから、頑張ってもこれくらいなんです。とても遠いんですよ。

よく見かける鮮明な土星はね、人工衛星が土星のすぐそばまでいって撮影しているんです」

月までの距離の4000倍、と思って私は望遠鏡の中をもう一度覗きこんだ。

ぼんやりとした輪郭のブラウンの土星は、小さな輪をまとって望遠鏡の中にいた。

こんなにすごい望遠鏡を使っても、こんな小さくしか見えないくらい、とても遠くにあるのか。宇宙はとても広くて遠いのか、と私は感心して、

「こんなにすごい望遠鏡でも、こんなに小さいなんて、これは…本当にとても遠いですねぇ」

ともう一度いった。

土星がとてもとても考えられないほどの遠くにあることと、人工衛星が誰もいない宇宙の中で孤独に土星のそばまでいることに、なんだか寂しいような、面白いような不思議な気分になったのだ。

土星は12億光年先にあるという。だとしたら、二十億光年の孤独ならぬ、12億光年の孤独、ってところだろうか…。

 

そんなわけで、今日は生まれて初めて、望遠鏡から土星を見た感想でした。