電子の海でダンスを

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【映画】ユダヤ人を救った動物園〜アントニーナが愛した命〜感想!思いのほかスリル&サスペンス、そして思い出す夜と霧【★★★★】

【映画】ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜感想


映画「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」予告編

現在海燕さんとラジオをやっている私ですが、そこで

「来週までに映画館にいく」

という課題を出されたので行ってきました。で、みたのがこの映画、

『ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~』です。

 

ポーランドで動物園をやっているジャビンスキ夫妻、妻アントニーナと夫のヤンが、秘密裏にユダヤ人を救っていく…という映画なんですよね。

実はこのお話、本当にあったお話で、アントニーナとヤンが300人余りのユダヤ人を救ったというのも本当のお話です。

アントニーナが経営していた動物園はワルシャワ動物園というところで、いまでもワルシャワで動物園をやっているんですよね。行ってみたい…。

 

原題は、The Zookeeper's Wife、つまり動物園の妻……ってめっちゃそのままだ!

 

 

ネタバレなし感想!

『第二次世界大戦前~戦争に突入するポーランドを舞台にした映画』

ときいていたので、差別に対抗する人情映画なのかな…?などと思っていたのですが、こう、あれでした、予想に反して映画全体のテイストは、スリル&サスペンスでした。

 

この間スパイ映画の「マリアンヌ」をみたんですけど、それよりハラハラドキドキでしたよ!

スパイ映画よりドキドキするなんてドキドキ感がすごい!これは予想外。

 

それもそのはず、これ、誰が敵か味方かわからないんですよ。

ポーランド人も誰が敵か味方かわからない。ナチスの兵隊たちも実は味方がいたりいなかったり、次々と出てくるキーになる人物が、敵なのか味方なのか、どちらについてくれるのか常にハラハラさせられっぱなし。

 

しかもジャビンスキ夫妻、妻のアントニーナと夫のヤンは、秘密裏にユダヤ人をかくまっているため、ドイツ兵に声をかけられたりするたびに

「まさかばれた!?」

と思わせられるというほんと、息を詰めるようにハラハラさせられる映画でした。

 

そのため、ネタバレを見ると面白さが半減します。この映画はネタバレを視ずに、ぜひ誰が敵か味方かわからない状態で見てほしい…!

 

乱暴された女の子はユダヤ人ではないのでは?

物語を通じて、主人公アントニーナは夫のヤンが助けてきた少女、ウルスラちゃんと交流します。

ウルスラちゃんは収容所に連れて行く前に、ユダヤ人を集めて閉じ込めていたユダヤ人居住区にいた少女です。ドイツ兵に乱暴されたところを、夫のヤンが助けてアントニーナの家に連れてくるんですよね。

 

で、ユダヤ人居住区にいたんだから、ユダヤ人だと思っちゃうじゃないですか。

でも、多分違うんです。この子、アントニーナに最初心を開かないのですが、ユダヤ人たちがやってきても心を開かない。あれ?仲間がきたのに?と私は疑問に思ったんですが、途中からなんとなく思いました。

 

彼女、多分ロマです。だからユダヤ人は同胞ではありませんし、仲間でもないので、心を開かないわけですね。

ロマ、むかしはジプシー等と呼んでいた人々。

ナチスはユダヤ人も迫害したんですが、ロマや同性愛者なども同時に迫害していました。なので、彼女がユダヤ人居住区に閉じ込められていたのも不思議ではないのですよね~。

 

ウルスラちゃんがロマなのかな?と思った理由一つは、一つは、アントニーナが彼女に、

 

「あなたの名前、しろくまって意味なのよ、知ってる?」

 

ってきいたこと。その当時、ロマは十分な教育が受けられませんでした。

なので、自分の名前の意味を知っているかとアントニーナがきいたのは、そういった背景を受けてかな??となんとなく思ったのです。

 

もう一つは、ウルスラちゃんが途中で

「まじない歌を歌っていい?」

って言って、ろうそくをたてて歌を歌いますよね。あれでロマかな?と思ったところもあります。

 

ロマはタロット等で占いをやって生計をたてていたり、人々にまじないをしてやったりと、呪術と非常に関係が深い人々でした。

キリスト教が強いヨーロッパにおいて、こういうキリスト教と関係なさそうな呪術的な行為を彼女が行っているということは、彼女ロマなのかも、と私は思いましたね。

あと、このウルスラちゃんの歌った歌がこう…多神教を感じさせる旋律というか…日本の昔の酒つくり歌とか、たたら歌とか思い出すみたいなああいう感じの、キリスト教と関係なさそうなああいうタイプの歌で、ロマっぽい予感を感じました…笑

 

歌のことを書いたついでに思い出しましたが、この映画、アントニーナがピアノを何度も弾きますよね。これ、曲名と作曲者が知りたい…。

多分、意味があるんじゃないかと思うんですよ。ドイツ兵に弾くときはドイツの曲、とか、ユダヤ人を呼ぶときはフランスやアメリカの曲、とか。予想ですけども。

 

映画だと音楽で反抗を表したりするのは割とよくある手法で、風立ちぬとか、古くはカサブランカなどでも使われています。

だからこの映画もそうじゃないかなぁ…??

 

誰か…わかりませんか、アントニーナの弾いていた曲のタイトルとか…無教養なのでわからない…。

 

序盤のカットで気になったとこ、ほか。あとジルスチュアートの話も。

この映画の序盤、象の子を助け、キスをする夫婦、そしてそれを一段高い所から見下ろすライバルのヘック。

このワンカットが、今後の展開の暗喩のような、美しいカットだった!

ここがすごく好きでした。

 

カットの他には、人が思いのほか死なない映画だなとも思いました。

殺戮の時代の映画ではありますが、ほんと人間の死体や血などはほとんどでません。

そういった意味では、血やホラーがだめ!という人でも見ることができる映画だと思います。

 

ただし!

代わりのように動物がことごとく死にまくります。

戦争に突入すると、弱い者が最初に犠牲になる、何て言われますよね。

この映画の中では、犠牲になったのは動物園の動物たちで、ああ、そうだよな、動物は人間よりもっと弱い立場で、この映画の中のもっとも弱い者たちなのだと思い知らされるほどに序盤に動物がばたばた死んでいきます。

 

人の死体がほとんど出ない反面、動物が恐ろしいほどにあっさりと殺され、ハエのたかる血まみれの肉になっていくのはしっかりと描かれていて、これは人間の暗喩では…と思うほどでした。


そして無茶苦茶関係ないですけど、衣装が綺麗でした笑

主人公アントニーナの着ているワンピが、クラシカル+エレガント系なのでとてもよかったです…。

ライバルといちゃつくときに来ていた茶の花柄ワンピース、逃げるときに来ていた茶色のコート、すごくシルエットも綺麗で欲しい……と思ってました笑

 

衣装協力に見間違いでなければジルスチュアートがいたとおもうので、私が気に入った服、ジルのじゃないかなぁ…わからないですけど。

 

アントニーナの白いリボンはかわいいアイテム?

 

そしてファッションついでに「アントニーナの白いリボン」の意味についても、

あれは、白旗、ですよね。

 

あなたに降伏します。という意味。

ツイッターを見てたら、白いリボンがかわいい!と書いてあったんですけど、私は白旗だよな…と思いながら見ていたので、素直に同意できなかった。

 

あのシーンのアントニーナの美しすぎるほどの化粧、そして白いリボン。

あなたの足を舐めます、降伏しますのサインです。

ああ、つらい。 

 

ところで、何度も出てくるコルチャック先生+ハンコ職人女子について

さてさて、この映画を見てると、説明なしにコルチャック先生と、パン屋のハンコ職人女子たちが現れます。

気になった人も多いのではないでしょうか。

 

というわけで勝手に書きますが、コルチャック先生とはあの当時有名だった児童文学者であり子どもの権利を唱えた、ヤヌス・コルチャックという人です。孤児院もやっていました。

なのであの子供たちは先生の孤児院の子たちかな?


この映画には、2度ファンタジーが現れます。

一つはウルスラの歌、もうひとつがこのコルチャック先生による、最後の物語、魔術師の話です。

 

辛い時に人は物語の力に頼ります。コルチャック先生も最後はファンタジーの魔法の力、物語の力で自分と子どもたちを奮い立たせる。

多分彼の場合は頼ったというより、物語の効力を知っていて使ったのです。魔法使いみたいに。うう、つらい…!

 

私は、この、コルチャック先生による魔法物語が語られ、電車に乗せられる子どもたちが、のせてくれるヤンに向って、その両手を広げるシーンでもう号泣ですよ。行き先はアウシュビッツ(映画では明言されません)、列車に乗せる夫の心中を考えると、もう泣きそうでした。

そして子供たちの瞳がほんとうに子供で、キラキラしてて、そのワンシーンに胸がぎゅっとなりました…。ああ…戦争はいやだ…。

 

そしてハンコ職人女子たちは、ポーランドレジスタンス、イレーナ・センドラーさんが組織したものです。

彼女はユダヤ人の子供を組織だって逃したレジスタンス革命女子(しかも最近まで生きてためっちゃ長生きおばあちゃん)、で、カトリック教徒、バチカンからこの件で表彰されています。

 

最近のノーベル賞候補だったらしいです。受賞しませんでしたけど。

根性ある人なんですよね~。

 

脚本的に面白かったところは?

一つ脚本的に面白いな、と思ったのは、アントニーナの夫が、シナリオ上で強制退場させられるところですね笑

 

この映画の問いたいところは、

「支配(コントロール)」

だと思います。アントニーナも一度はっきり明言しています。

で、ラストにその支配の問題と戦うというシナリオに絞られていく。

 

ただ、そのために夫がいるとちょっと邪魔なのです。

夫がいると、色恋沙汰や嫉妬の問題などがからんできて、ちょっとシナリオがぼけちゃう予感がします。

それが、退場することによって、シナリオが目指す着地点まで、余計なものがなくなっていくというのがうーん、うまいなーと思いました。

 

その他覚え書き。

・支配される側にとっては、性的なものを見せつけられるのは本当に屈辱になるんだなと思いました。

敗戦した側の公共放送を全部ぽるのにしたというエピソードをどっかできいたことがあるんですが、そういうのがあるくらいだから、そうだよなぁとは思いましたが。

ちなみにこれはバッファローの件で。にやつく兵士、顔を伏せるアントニーナのシーンですね。

 

・ドイツとポーランドの背景としては、ポーランドはヨーロッパの中であの当時2級ヨーロッパ人みたいな扱いでした。近い地域のハンガリー等も同じ扱いでした。

だから、最初のシーンでやけにアントニーナが馬鹿にされたり肩身がせまかったりしていますがそれは多分そういうところから。

 

・字幕放送だったので、字幕ではアントニーナがよく「動物たち」と言っているんですが、英語をきいてると、愛する子たち、とか愛しい子たち、みたいなラブなんちゃらみたいな、子供をスイートとかキューティーとか呼ぶみたいな感じでよんでて、言葉にも動物愛が溢れておりました…!

 

・あとやっぱり演技よかったなぁ。アントニーナ役のジェシカ・チャステインさん素晴らしかった。体張ってましたね~!

そして最後のアントニーナの悲鳴は悲鳴じゃなくて慟哭というか、嗚咽のような、そうですよね、そうなりますよね。うわーん!ネタバレになっちゃうので伏せますが。

 

・ワルシャワが、その後空爆で灰になることを考えると、あそこにいることは全ての意味で詰みなんですよね。アントニーナはその意味では、あれがばれてよかったのです、逃げる契機になった…!

 

この映画は映画館で見てほしいかも。

それにしても、この映画で爆弾が落ちた初弾一発、私はめっちゃびっくり+恐怖で戦争の迫る恐ろしさの臨場感が全然違ったので、映画館で見てよかったなぁと思いました。

落ちる爆弾の、威力と音が半端なかった…。最近の映画館すごい…。

この臨場感だけでも、心に響き度がなんか違う気がしたので、皆さんもぜひ映画館で見て下され。

 

そして映画を見て、フランクル先生の本『夜と霧』を思い出しましたね。

 

「良い人は帰ってこなかった、全てが悪ではなかったのだ、ナチにも悪人も善人もいた」

 

という言葉が本の中にありましたが、これ、この映画の主要なメンバーに言えることですよね、主人公含め全員、悪人ではないが、完璧な善人でもない。完璧な善人ではないが徹底した悪人でもない。

それが、ナチであっても。

 

 

最後に。

今回の映画、映画館で泣きすぎてやばかったです…笑

もーいつからこんな泣いてしまうようになったんでしょうか私は。

そして、映画館は、スターウォーズ一色でした笑。

皆スターウォーズしか見に来てない!

アントニーナ見に行った私がかなり異端者な感じに…!!!

 

というわけで今回の映画は★4です。★4なのは、私にとっての萌えキャラがいなかったからというだけでです。

おすすめでーす!

 

 

追記。

今日海燕さんと話した「ユダヤ人を救った動物園」の話などはこちらのラジオでーす。

www.youtube.com

 

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